ヒダマルの読書日記。

乱読ッカーなヒダマルが読んだ本の感想文。小説は分析もします。

伏線が交錯する、子どもの為のファンタジー。 『かがみの孤城』

  2018年本屋大賞に選ばれた長編小説。

 著者:辻村深月
発刊:ポプラ社
頁数:554頁
発行:2017年5月15日
ジャンル:ファンタジー

※この記事は重大なネタバレを含みます。

 

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見事な導入と、「起」までの情報開示術。

 とある理由から学校に行けない中学生、安西こころ。
 冒頭の重苦しい雰囲気から始まったと思いきや、鏡の中へ吸い込まれて狼のお面を被った女の子に

「あなたは、この城のゲストに招かれましたー!」

 と祝福されます。


 曰く、この城のどこかには「願いの部屋」が隠されており、その鍵を見つけた者はどんな願いでもひとつだけ叶えることができるらしい……、

 

 

 という、


 超エンターテイントな導入部分。

 

 

 ライトノベル的展開で(ラノベはもっとスピード感あるけど)、本を読み慣れていない人でも読みやすそうな印象でした。

 これなら中学生にも、あるいは小学生でも読めます。
(主人公たちが中学生なので、当然と言えば当然ですが。すごい技術と工夫だと思う)

 

 


 他にも、

〇鏡の城でメインキャラが揃う・・・30頁
〇設定説明と自己紹介・・・50頁(ここで、切りよく一章が終わる)
〇メインキャラが互いにギクシャクしつつ、女子三人が仲良くなり、こころが「事件」について語る・・・約120頁

 と、小説のツボをキッチリと抑えた構成になっていました。
(ページ数は、第一章1頁目を基準として数えています)

 

 

不登校」という重めな題材を扱いながらも、「キャラ」「構成」等のエンターテインメントの基礎を固めることで、読みやすさ・奥深さを実現しています。

 情報の出し方、構成の組み立て方、それらに伴ってのキャラ立てと、言うことなしの小説。
 小説家志望の人間には、教科書になります。

 

 

数多の伏線。

 この小説の特にスゴイ点は、もうひとつ。


 伏線の数が尋常ではありません。

 


 一度読んだ後に、もう一度読み返してください。
 というか、読み返したくなるはずです。

「あ、これも伏線だ」「お、こんな所にも」「あ、この会話はこういう意味だったんだ」と驚き、「正」の字を書き連ねたくなること必至ですから。

 

 

「鍵の在処」のヒントとなる伏線は目立つので、おそらく多くの方が気付くでしょう。
 そして、そちらに気を取られるでしょう。


 けれど、作者が本当に隠していたかったのは、別の真実です。


 それに関する伏線が、もう、いたるところに散りばめられています。
 これでもかーこれでもかーってくらい。

 

 

 ……ちなみに、別の真実についてはヒダマル、「あ、これは時間がズレてるな」とね、中盤の保健室で気付いてましたよ。これホント。

 ホントですってば。

 信じて。

 頼むから。

 お願い。

 

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七人も要るかなぁ……。

 メインキャラだけでも七人いるので、メンバーを描き分けるのは大変だったろうなぁ……。
(正直、読む方も大変っちゃぁ大変で……。ヒダマル、最後までスバルとリオンがごっちゃだった。というか、スバルは必要だった?


 その他サブキャラも六人いるので、計十三人!!

 まぁ、サブキャラの大半は主人公・こころにしか関わらないので、そこはごちゃごちゃすることはありませんでした。

 


 その中でたぶん、頼れる大人の喜多嶋先生が一本の芯になるんだろうな、とは予想していましたが……。

 まさか、メンバーのひとりだったとは……。


 そして、超常的なオオカミさまもまた、メンバーのひとりだったとは……。

 

 

まとめ。

「非日常の試練を乗り越えた主人公が、苦闘の末に日常へ帰る」という、神話にも似た王道ストーリーでした。


 キャラ、構成、情報公開、数多の伏線など、どれとをっても秀逸。

 中学生にも、高学年なら小学生でも読める内容ですが、決して子ども向けの小説ではなく、むしろ「子どものための小説」であると言った方が本質的でしょう。
(であればこそ、大人が読んでも十分に味わえます)


 これは、お勧めできます。


 久しぶりにラノベ以外の小説読んだな……。