ヒダマルの読書日記。

乱読ッカーなヒダマルが読んだ本の感想文。小説は分析もします。

わがままでなく、あるがままに。 『すきまのおともだちたち』


著者:江國香織
発刊:集英社文庫
頁数:174頁
発行:2008年5月25日
ジャンル:ファンタジー

 2005年、白泉社から刊行された単行本を文庫化した一冊。

 

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 言わずと知れた小説家・江國香織さん。
 実は『ちょうちょ』や『いちねんせいになったあなたへ』など、絵本もいくつか手掛けています。

(『桃子』や『デューク』など、小説・絵本の両方が存在する作品もあります)

 


 この『すきまのおともだちたち』はというと、「小説」と「絵本」の中間あたりにくる物語。

 挿絵が多く爽やかな文体、そして170頁程度の文字数ですから、さらりさらりと心地良く読み進められます。

 

 

女の子とお皿、あるがままのキャラクターたち。

 若く溌溂とした新聞記者の「私」が、現実とは別の世界に迷い込むお話。

 ジャンル分けするならば、最近はやりの「異世界系」とも言えますね。

 


「私」が出会うのは、古びたお皿と一緒に暮らしている、ちいさな女の子です。

 この女の子が、それはそれはたくましい。


 手作りのレモネードを売り、得意な針仕事を請け負って、お皿とふたりきりで自活しているのですから。

 ……「お皿」というのは、お皿です。
 喋りますし、車の運転もします。たまに割れます。

 

 

 物事をあるがままに受け入れ、あるがままに存在し続けている「すきま」の住人たち。

 生きるパワーに溢れ、それでいて慎ましく暮らしている女の子を見ていると、ヒダマルも肩ひじ張らずに生きて行けそうな気になってきます。

「力の入れどころ」というか、「何を大切にしていくか」を考えさせられます。

 

 

拒めないレベルの描写術。

 ヒダマルなんぞが言うまでもなく、江國香織さんは一流の小説書き。

 そんな方の文章を読んでいると、夏の陽射しや木陰の暗さなんかの情景が、心と身体にすんなりと入ってきます。


 ……入ってくる、という言葉も使いようで。
 江國香織小説の場合、「抗いようもなく侵入される」というパターンもあるんですよねぇ。

 例えば『すいかの匂い』という短編集では、ほおずきを口に含む女性の仕草や、新幹線が嫌いな人間の感覚が否応なしに入り込んできて、途中で気持ちが悪くなり読むのを止めました。

 レベルが高すぎるのも困りものです。

 

 

 ただ、『すきまのおともだちたち』に関してはその心配は無用。

 どんな季節もどんなキャラクターも、爽やかに晴れやかに描かれているので、心身に入ってきたところで無害です。

 

 

イラストは「こみねゆら」さん。

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 ヒダマルは美術館で原画を見たことがありますが、それはもう柔らかく繊細な世界観の絵を描かれる方。

 確か、手作りの人形も展示されていました。
 これがまたミニチュアサイズで、フリルやらモヘアやらの装飾がこまやかなんですよ。

 二次元でも三次元でも作品を創れるなんて凄い。

 

 こちらは、こみねゆらさんのブログです。

blog.goo.ne.jp

 

 

 昔は『にんぎょうげきだん』や『くまの楽器店』の絵本を持っていましたが、困窮により手放してしまいました。

 いつか買い戻したいなぁ。

 

 ヒダマルはアニメ・漫画・小説と、フィクション作品はだいたい何でも好むのですが、絵本作家・イラストレーターさんにもファンが多いのです。

 筆頭は坂井駒子さん、次点で荒井良治さん、五味太郎さんやいもとようこさんや山村浩二さんなどなど……。

 絵本の紹介は『ヒダマルの子育て情報館。』の方でやっていますが、もしかするとこちらでも取り上げるかもしれません。

 

 

まとめ。

 前述の通り、江國香織さんの小説は毒にもなり得るのですが、この作品は大好物。文章とイラストの相乗効果で、心地良く読める本です。

 疲れた時、ちょっと休みたい時などにお勧めの一冊。

 

 あるいは、「休み方を忘れた」なんて人にも……。