ヒダマルの読書日記。

乱読ッカーなヒダマルが読んだ本の感想文。小説は分析もします。

抱腹絶倒変態短編集。 『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』


著者:野崎まど
イラスト:森井しづき
レーベル:電撃文庫

発刊:アスキー・メディアワークス
頁数:323頁
発行:2012年11月10日
ジャンル:ライトノベル、短編集

 

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 野崎まど。

 処女作でもある『【映】アムリタ』が第一回メディアワークス文庫賞に選ばれ、独特なギャグセンスと壮大などんでん返しに定評のあるラノベ作家。

 そんな壮大に独特な方が書いた「独創短編集」こそが、この『野崎まど劇場』なのです。


 一言でいうと、


 笑えます。

 

 

鬼才・野崎まど。

 主に電撃文庫MAGAZINEに掲載された短編を集めた一冊で、描き下ろし3篇+没ネタ5編を含む計24編の大ボリューム。

 ほとんどが10頁前後で終わるショートストーリーのため、隙間時間にさらりと読めるのも嬉しい構成です。
(さらり程度で済む面白さではありませんが)

 

 本としての作りも遊び心満載で、裏表紙に小説が載っていたり、

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 表紙カバーの裏に小説が載っていたりします。

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電撃文庫では、「カバー裏に小説」はとある作家さんが度々やってますが……)

 

 

笑いのパターン。

「まず1頁半程度で世界観を構築し、そこから崩しに崩して笑わせる」というスタイルが共通しています。

 

 例えば……、

『森のおんがく団』の冒頭では、森の中で楽器を弾き、発表会の練習をしている三匹の動物さんが登場します。
 ひらがな多めなメルヘン世界です。


 しかし、彼らが担当している楽器は、

ライオンさん:小太鼓
ぶたさん:タンバリン
うさぎさん:ローランドVシンセGT

 です。
 明らかに一人浮いとる。

 

 

 そこからはもう、畳みかけるように世界観をぶち壊していきます。ツッコミはうさぎさん。

 

 偉そうなことを言うライオンさんに

 うさぎさんはライオンを張り倒そうかと思いましたが、話が進まないので我慢しました。

 だったり、

 

「ぶぅ ぶぶぅ」しか喋れないぶたさんに

「だから何でお前は喋れないんだ! おかしいだろ! 喋れない動物が居るとか社会が成立しないだろ!」

 とツッコんだり、

 

 音楽に集中するためにP(プロデューサー)を立てるべく森の魔女の元を訪れたところ、

「動物が喋ってる!」
「また根本的な所まで戻るなぁおい!」

 だったりするのです。

 


 置かれた世界観の中で時に狼狽し、時にツッコみ、時に気ままに振る舞うキャラクターたち。

 その様子を描写する地の文のスパイスも絡まって、極上の笑いを生み出しています。

 

 

図解を駆使した笑い。

 この短編の特徴は、もうひとつ。

「図解」です。


『魔王』では、勇者を迎え撃つダンジョンを考案する魔王の頓珍漢なアイデアが、図面で示されています。


 将棋の解説をベースにした『第60期 王座戦5番勝負 第3局』では、常識破りな棋譜(「初手・王手」、歩を王の上に乗せることで一回の攻撃に耐えるバリヤーを作る「アポロ囲い」など)を分かり易く伝えるために、盤面の画像が載せられています。


『苛烈、ラーメン戦争』では、店長とバイトの加藤さんがラーメン屋の危機を救うべく、ラーメンに改良を加えていく様が描写されています。

 

『苛烈、ラーメン戦争 ―企業覇道編―』では、思いがけず大企業の上役になった副社長(元・店長)と社長(元・バイトの加藤さん)がラーメンを作れない現状を打破すべく、未来を模索する様が描写されています。

 

 世界観崩壊が視覚で補助されているため、フリップ芸のような直感的な笑いを楽しむこともできるのです。

 

 

まとめ。

 大好き。


 この笑いが分からない人もいるかもしれませんけど、ヒダマルにはツボ過ぎます。抱腹絶倒とはこのこと。

 電車の中で読める人は、そうそういないことでしょう。


 野崎まどさんの長編も独特の笑いと大風呂敷などんでん返しが大好物なのですが、こちらはこちらで深い味わいがあります。

 騙されたと思って、是非。